Journal Club 雑記

MTX osteopathy のシステマティックレビュー

Clinical features of methotrexate osteopathy in rheumatic musculoskeletal disease: A systematic review. Semin Arthritis Rheum. 2022 Feb;52:151952.

 

【Introduction】

Methotrexate (MTX)メソトレキセートについて
  • 葉酸代謝拮抗薬で免疫抑制作用および細胞毒性作用を有し、関節リウマチのようなrheumatic musculoskeletal diseases (RMD)によく使用されている
  • 様々な副作用も報告されており、MTX-associated lung injuryMTXに伴う肺障害、myelosuppression骨髄抑制、hepatotoxicity肝毒性などがある Rheumatology 2021;60(9):4001–17 (Oxford).
  • 最近は‘MTX osteopathy’として、MTXが個々の患者の骨代謝を障害し、固定性骨痛や低骨量(すなわち骨粗鬆症)を伴う特異なタイプの外傷性ストレス骨折を引き起こすという症例報告が増えてきている
    • 最初の報告は、acute lymphoblastic leukemia急性リンパ芽球性白血病やその他の悪性腫瘍に対し、高用量MTX療法を受けた小児 Cancer 1970;25(3):580–5.
    • 最近はRMDのための低用量MTX療法を受けた成人患者
    • これまでの‘MTX osteopathy’の報告は以下のリウマチ性疾患で報告されている
      • RA  Calcif Tissue Int 2021;108(2):219–30.
      • psoriatic arthritis (Psa)  Ann Rheum Dis 2001;60(8):736–9.
      • psoriasis (Pso)  Osteoporos Int 2021;32(2):225–32.
      • systemic scleroderma (SSc)  Rev Rhum Engl Editor 1998;65 (7À9):508–10.
      • juvenile idiopathic arthritis (JIA)  Ann Rheum Dis 2003;62(6):588–9.
      • systemic lupus erythematosus (SLE)  Lupus 2019;28(6):790–3.
      • polymyalgia rheumatica (PMR)  Calcif Tissue Int 2021;108(2):219–30.
      • ankylosing spondylitis (AS)  Calcif Tissue Int 2021;108(2):219–30.
RMDにおける‘MTX osteopathy’のの作用機序として以下の報告がある
  • (in vitro)osteoblastic cell骨芽細胞の機能(すなわち骨形成)の低下させる Arthritis Rheum 1996;39(3):489–94.
  • (in vitro)用量依存性に炎症性サイトカイン(interleukin-1およびÀ6)産生 に関連する Arthritis Res Ther 2014;16(1):R17.
  • (in vivo)骨のメカニカルな特性を低下させる Pharmacol Rep 2007;59(3):359–64.
  • (in vivo)破骨細胞新生(すなわち骨吸収)を増加させる増加  J Pathol 2012;181(1):121–9.
著者らの報告したRMD患者の大規模コホートについて
  • 成長板に沿ったストレス骨折が帯状または蛇行状に現れる(epimetaphyseal osteolysis骨端溶解, band-like sclerosis帯状硬化)いうMTX骨症のユニークな病理を示す Calcif Tissue Int 2021;108(2):219–30.
  • これらのストレス骨折は関節炎のミミックとなることがあり、通常はdistal tibia脛骨遠位部, calcaneus踵骨 and proximal tibia脛骨近位部におこる Osteoporos Int 2021;32(2):225–32.
  • load-dependent (mechanical) pain荷重依存性の(機械的)疼痛を認めるため、osteoarthritis変形性関節症のflare-upフレアにも似ている
  • 多発骨折は普遍的におこり、よく左右対称の骨折がおこる左右対称の骨折
このシステマティックレビューの目的
  • RMD患者におけるMTX osteopathyの臨床的特徴、危険因子、治療法を評価すること

【Methods】

MEDLINE via PubMed, Embase via Ovidを使用して2021年07月08日までの期間
  • MTX osteopathyに関するケースを検索使用したkeyword
    • ‘methotrexate therapy’ and ‘bone lesions’
  • MTX治療歴のある患者を特定するために使用したkeyword
    • ‘methotrexate’ and ‘MTX’.
  • 骨病変の既往のある患者を特定するために使用したkeyword
    • ‘bone mineral density’, ‘bone mass’, ‘bone pain’, ‘osteopathy’, ‘osteopathic’, ‘osteoporosis’, ‘osteopenia’, ‘fracture’ and ‘medial tibial stress syndrome’
  • MEDLINEで使用したkeyword
    • ‘methotrexate’, ‘bone density’, ‘osteoporosis’ and ‘fractures, bone’.
【Result】
RMDにおけるMTX osteopathy の臨床的特徴
  • MTX osteopathyのほぼ全例95%がストレス骨折を呈した(76/80、95.0%)
  • 脛骨内側部ストレス症候群(MTSS)が4例にみられた(4/80; 5.0%)
  • 骨折部位の腫脹は4分の1の症例で関節炎に類似している(21/80、26.3%)
  • RMDに起因する活動性の関節炎はほとんど認められなかった(7/80;8.8%)
また、骨粗鬆症に典型的に関連する椎体骨折(5/80、6.3%)はほとんど見られなかった
MTX osteopathyにおけるMTXと全身性ステロイド療法
Laboratory features
  • 報告例のほぼ半数が25-OH-D3値<30 mg/Lまたは<75 nmol/Lのvitamin D欠乏症あり(22/52人; 43.1%).
  • そのうち、患者22人中6人はvitamin Dレベル<20 mg/Lまたは<50 nmol/L
  • 患者22人中3人はvitamin Dレベル<10 mg/Lまたは<25 nmol/Lであった
  • 患者46人中17人は約3分の1は、ALPが上昇(37.0%)
  • 患者44人中8人は副甲状腺ホルモン(PTH)値の上昇も相当数報告されている(18.2%)
  • 低カルシウム血症の報告なし
MTX osteopathyにおける治療と転帰
  • 患者55人中43人(78.2%)が治療をうけていた
    • そのうち21/43人(48.8%)antiresorptive drugs抗骨吸収薬 (bisphosphonates or denosumab)で治療
  • 患者43人中5人(11.6%)osteoanabolic drug teriparatideで治療された
  • denosumab and teriparatideの併用・順次投与は15/43例(34.8%)に実施
  • 患肢固定(20/80;25.0%)や外科的治療(2/80;2.5%)はまれ
  • MTXの継続または中止を報告した41/80例(51.3%)のうち,MTXの完全中止はほぼ3分の2(28/41例,68.3%)
  • 骨折治癒が確認された15/17例では,ほとんど症例でMTXが中止されていた(8/15例,53.3%)

【Disccusion】

  • ストレス骨折は低用量〜中用量のMTXでも発生し、投与量に依存する毒性というよりも特発性薬物反応を示唆している Ann Rheum Dis 2003;62(11):1123. author reply 4.
  • 遺伝的多型がMTX治療に伴うストレス骨折の感受性に寄与している可能性がある。
  • RA以外の様々なRMD(22/80;27.5%)でMTX骨症が認められ、疾患特異的な併存疾患というよりもMTXに関連した骨毒性の概念を強調している Calcif Tissue Int 2021;108(2):219–30.
  • ストレス骨折も検出するために診断にはXpよりもMRIを優先したほうがよい J Rheumatol 2010;37(11):2434–8.
  • 一部の患者では、MTXの中止だけで骨折治癒に十分な効果が得られる可能性があるが、重度骨粗鬆症の場合は、デノスマブとテリパラチドの併用療法を提案する Calcif Tissue Int 2021;108(2):219–30.
  • またロモソズマブという骨吸収抑制作用を有する新規モノクローナル抗体の使用も検討する
Limitations
  • ヒトにおけるMTX療法とストレス骨折間に推定される関連は現在の研究では確立されていない
  • MTX osteopathyに関する最大のコホートだが、それでも症例数が少ない
  • 骨折が発生したときにMTX療法を中止したかどうかなど、多くの報告が詳細な分析に必要な十分なデータがない
  • MTX以外の要因として、ストレス骨折発生には、全身性ステロイド療法、骨粗鬆症、疾患活動性、機械的に過度な負荷などが関与している可能性がある
  • 骨盤骨折など報告された骨折の中には、必ずしもMTX osteopathyのスペクトルに属さないかもしれないものもある