Age-related autoimmunity. BMC Med. 2013 Apr 4;11:94.
【Final comments】
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高齢者の自己免疫は、免疫反応によって末梢のTregの数が拡大して自己免疫疾患の本格的な発症を防ぐことでバランスをとっている
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この自然なプロセスは、調整された合理的な状態を維持しする必要があり、維持できなければ、CD4+ T effector cells or CD8 cytotoxic T cellsが抑制され、がんや敗血症が発症してしまう
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今後の目標の一つとしては、このチューニングに影響を与える方法、すなわち高齢者におけるTregを免疫調節する方法を明らかにすること
【Introduction】
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Longevity長寿というのは自然免疫の最適化と関連している
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Immunosenescence免疫老化は、感染症などの慢性的な抗原刺激によって絶えず影響を受けている
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ゆえに、病原体の負荷が少ない環境では、免疫反応のバランスがとれた状態が期待でき、炎症反応が進行する可能性が低くなり、長寿になる確率が高くなる Exp Gerontol 2003, 38:13–25.
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agingの研究においては、年を経るについれて様々な感染症に対処する能力が低下することが注目されている
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この状態は「inflamm-aging炎症老化」として認識されている
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炎症刺激が長期間持続することは、「first hit」と呼ばれ、加齢に伴う疾患への感受性を高める
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「second hit」は、強固で有益な遺伝子変異がないことで、臓器特異的なage-related diseasesの進行に重要である Ann N Y Acad Sci 2000, 908:244–254.
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炎症は(炎症性サイトカインや急性期タンパク質を介して)若い人では危険な感染因子を防いだり中和したりするのに重要
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一方で、高齢者では免疫調節の変化や反応の不均衡につながる重大なストレスとなる
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加齢に関連する疾患としては、自己免疫、自己抗体があり、また癌の有病率の増加や、細菌・ウイルスへの感染しやすくなる
【Autoantibodies and aging】
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高齢者における臓器非特異的抗体の有病率に関する研究では、健康な80歳以上ではrheumatoid factor 14%, antinuclear antibodies 31%,anti-cardiolipin antibodies 51%が検出された
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一方で、非高齢者のpopulatiopnでは臓器非特異的抗体は2%以下であった Clin Exp Immunol 1987, 69:557–565.
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増加した主な自己抗体としては、antinuclear antibodies抗核抗体、anti-cardiolipin antibodies抗カルジオリピン抗体、anti-thyroid antibodiesなどが顕著であった
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これらの抗体が増加した原因としては、自己免疫反応が誘因であるというよりも、むしろ組織の損傷過程やアポトーシス細胞への高い曝露による結果であることが示唆された Mech Ageing Dev 1997, 94:183–190.
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100歳の276人を調査した研究では、79%がリウマチ因子、抗核抗体、抗カルジオリピン抗体、抗好中球細胞質抗体など少なくとも一つが陽性であった
【Autoimmune diseases in the elderly】
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高齢者では自己抗体が頻発するのとは対照的に、自己免疫疾患自体はまれである
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たとえ自己免疫疾患を発症してもその症状は軽く、moderateな免疫調節療法で十分にコントロールできる。
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65歳以上のsystemic lupus erythematosus (SLE)を評価したところ、late-onset SLEの発症率は12%から18%で、病気の経過は軽度であり、皮膚症状・光線過敏症・関節炎・腎炎はほとんど報告されていない
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一方で、肺病変やシェーグレン症候群はより頻繁に認められた
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late-onset SLE患者では、リウマトイド因子、抗Ro抗体、抗カルジオリピン抗体などの自己抗体の陽性率は高いが、低補体血症の発生は低い Autoimmun Rev 2008, 7:235–239.
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このように自己免疫性が高いけれども、自己免疫疾患の頻度が少なかったり、病勢が軽い理由として高齢者に非常に特徴的な多くの防御的調節機構の増大していることが考えられる。
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- 注目すべきは、保護的な自然免疫グロブリンM自己抗体の産生が高いこと
- 免疫グロブリンM抗カルジオリピン抗体
- 免疫グロブリンM抗二本鎖DNA抗体
- これらの抗体は重症のSLEの発症を予防するといわれており、腎疾患のない患者さんではより高値で推移している Clin Immunol 2012, 142:390–398.
【T-regulatory cells and aging】
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高齢者における自己免疫の頻繁な発生に関しては、self-antigens自己抗原やlatent viruses潜伏ウイルスへの高い親和性をもつT細胞が選択されることが一因であると考えられる
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これらのT細胞は、炎症を促進する能力が高く、それによって自己免疫を増幅することが示されている Cell Mol Life Sci 2012, 69:1615–1623.
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年を経るにつれ、胸腺のT制御細胞(Treg)のoutputは新しいT細胞を生成する胸腺の能力の低下に伴い減少する
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しかし、自己免疫疾患の発症を防ぐために、上記のバランスをとり、CD4+ CD25highFoxP3+ Tregsの末梢での発生が加齢に伴って増加している
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これが免疫機能障害なのか、あるいは自己免疫の増加とのバランスを目的とした防御反応なのかは、まだ不明である
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理由が何であれ、Tregの拡大は、癌の発生率の増加・感染症によりかかりやすくなるという点で代償がある必要である Exp Gerontol 2006, 41:339–345.
【T-regulatory cells and cancer】
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加齢に伴う自己免疫の増加は、Tregは増加してはいるものの、アポトーシスの亢進に対応しての自己反応性T細胞の抑制に失敗した結果であると多くの研究者は語っている
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老化したTregの慢性炎症関連の欠陥が示唆されている
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マウスモデルにおいて若いCD4+ Tregも老化したCD4+ Tregも同じようにインターフェロンγ+ T細胞を抑制する
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しかしながら、aged Tregs 老化したTregは炎症時にIL-17+ T細胞を抑制することができない
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老化したTregはSTAT3活性化の低下を発現しており、この欠陥はpoorなIL-17産生T細胞の拘束性と関連していることが判明し、高齢者における自己免疫疾患の発症の誘因となっている可能性がある Aging Cell 2012, 11:509–519.
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多くの研究から、高齢者ではTregが拡大することが示されている
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その結果、T細胞免疫反応の抑制が高まり、自己免疫疾患の予防につながる一方で高齢者の罹患率や死亡率の主要因となる感染症や癌への罹患しやすさは高まる
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免疫抑制性Tregの役割役割として、腫瘍の免疫回避と転移拡散はよく知られている
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Tregの数や機能の変化がすることで高齢者における腫瘍の高い発生率につながる可能性がある
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非小細胞肺癌の発生との関連で高齢者におけるCD4 + CD25highCD127lowの割合とFoxP3発現の変化の研究がある
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高齢者の非小細胞肺がん患者では健常高齢者や若年者と比較して、末梢性Tregの割合とFoxP3 mRNAの発現が有意に増加した
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Tregの割合とFoxP3 mRNAの発現は、高齢の肺がん患者におけるtumor node metastasis腫瘍節転移の病期と密に関連していた Chin Med J (Engl) 2012, 125:2004–2011.
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【Tregs and sepsis】
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Inducible Tregs 誘導性のTregは末梢性トレランスを維持して、CD4+ T細胞がT細胞受容体刺激に応答して細胞周期に入るのを防ぐのに重要
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これらのサブセットの一つに、CD8 + CD45RA + C-C chemokine receptor 7 (CCR7) + Foxp3 T cellsがある
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IL-10に依存せず、T細胞受容体シグナル伝達カスケードの非常に初期の段階への干渉に依存する抑制性の活性をもつ
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CD8 + CCR7+ Tregsの誘導性には年齢が関係し、60歳以上の高齢者ではその数は若年者に比べてはるかに少ない
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高齢者においてCD8 + CCR7+ Tregsが減少することはaging immune systemと関連があり、それは免疫老化が慢性的にくすぶる炎症の状態と関連している J Immunol 2012, 189:2118–2130.
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敗血症時の有益な免疫反応に関するTregsの状態もまた評価されている
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高齢患者において循環Tregの割合の増加は、リンパ増殖反応の低下と有意に相関していた
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これらの観察を模倣した敗血症のマウスモデルでの実験ではsiRNAを用いたex vivoにおけるFoxP3発現のdownregulationは、この反応の回復と関連していた Intensive Care Med 2009, 35:678–686.
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