Journal Club 雑記

成人期と小児期に診断されたDADA2の比較

DADA2 diagnosed in adulthood versus childhood: A comparative study on 306 patients including a systematic literature review and 12 French cases. Semin Arthritis Rheum . 2021 Dec;51(6):1170-1179.

【Conclusion】

  • 幅広い臨床スペクトルをもつDeficiency of adenosine deaminase 2(DADA2)アデノシンデアミナーゼ2欠損症は、成人と小児の両方に発症する可能性があり、成人では血管病変の表現型が過多になる
  • DADA2の臨床像の中で、成人特有の臨床的特徴を強調することにより、本研究は成人のDADA2診断に有用な臨床的ガイダンスを提供する
  • 実際には、PAN様の中血管炎を呈する成人においては、特に重度の皮膚/胃腸病変を伴う場合は、DADA2の診断に脳卒中の既往は必要ないはずである
  • さらに、DADA2は血管病変がなくても、骨髄不全(BMF)や分類不能型免疫不全症(common variable immunodeficiency: CVID)に様症状のある液性免疫不全(HID)の成人では、診断を考慮することができる
  • 最後に、様々なNext Generation Sequencing (NGS) パネルにADA2が含まれれば、特に成人において稀な表現型を示す場合に、DADA2をより良く認識することができるようになる

【Introduction】

  • Deficiency of adenosine deaminase 2(DADA2)アデノシンデアミナーゼ2欠損症は、2014年に2つの独立したチームによって報告された初めて報告された複雑な自己炎症性疾患であり、polyarteritis nodosa(PAN)結節性多発動脈炎のミミッカーでもある N. Engl. J. Med. 2014;370(10):911–20 Mar 6.
  • 2014年の報告以来, DADA2の臨床スペクトルは広がっており、現在では以下の疾患が含まれるようになっている
    • Diamond-Blackfan anemia-like pure red cell aplasia Diamond-Blackfan貧血様の純赤血球無形成症(PRCA)J. Pediatr. 2016;177:316–20 Oct.
    • 骨髄不全(BMF)によるその他の血球減少症  Blood 2017;130(24):2682–8 Dec 14.
    • lymphoproliferative disorders [5À9]リンパ球増殖性疾患 J. Clin. Immunol. 2019;39(1):26–9 Jan.
    • humoral immune deficiency (HID)液性免疫不全(HID) Arthritis Rheumatol. 2017;69(8):1689–700 Aug.
  • 多くの単一遺伝子自己炎症性疾患と同様に、DADA2は主に小児に発症し、77%の症例で10歳未満の発症年齢である J. Clin. Immunol. 2018;38(5):569–78 Jul.
  • 本疾患の同定に関しては、近年、まだ多くの成人患者は同定されていないため、医師は、この疾患の認識と治療を習熟する必要がある
疫学
  • 近年のDADA2の有病率は1:222,000と推定されており、これはin vitroでの残存ADA2活性が25%未満であるADA2変異体の対立遺伝子の頻度に基づいている J. Allergy Clin. Immunol. 2021;S0091-6749(21):00733. May 15-8.
  • 結果として米国では1500人が罹患している可能性がある一方で、国際的には300人未満しか報告されていない
  • さらに、DADA2の臨床的な不均一性は、小児期における診断の迷走や実質的な不適切なケアを長引かせる可能性がある
  • 最後に、この病気は成人で発症することもあり、報告された最高齢の患者は65歳で発症している Lancet Lond. Engl. 2021;397 (10277):913. Mar 6.
診断意義
  • たとえDADA2の診断が遅れたとしても、治療に大きな影響を与え、この特異な疾患における脳卒中を防ぐ唯一の治療法であるTNFα阻害剤の生涯投与へとつながることになる N. Engl. J. Med. 2019;380(16):1582–4 Apr 18.
  • 一方、PANと誤診された患者はTNFα阻害剤を投与される可能性は低く、したがって治療失敗や不可逆的な損傷のリスクにさらされることになる  Ann. Rheum. Dis. 2009;68(3):310–7 Mar 1.
  • その上、成人発症のDADA2患者を適切に同定することで、その後のスクリーニングや家族性症例の診断が可能となる
  • 先行研究ではDADA2研究の大半が小児に焦点を当てており、また年齢によって区別していないものが多かった
本研究の目的
  • 著者らは小児発症か成人発症かに関わらず、成人期に診断されたDADA2についてより詳細に説明すること

【Methods】

Patients
French cases identification
  • フランスの内科医およびリウマチ専門医の中で、2018年10月から2019年10月にかけて、成人期に診断されたDADA2症例の全国的な募集が行われた
  • 同時に、遺伝子診断のために、自己炎症性疾患・炎症性アミロイドーシスのthe French reference center遺伝学部門に、成人のDADA2患者を紹介したすべての臨床担当医に、この研究に参加する機会が提供された
Inclusion criteria
  • DADA2と診断された16歳以上の患者を対象とし、彼らは遺伝子検査でADA2のホモ接合体または複合ヘテロ接合体、あるいはADA2活性が低いことが確認されている
  • 成人期を16歳以上としたのは、still病と類似しているためで、still病は小児型(全身型若年性特発性関節炎)が16歳以前に発症すると定義される J. Rheumatol. 2004;31(2):3902 Feb.
Collected data
  • 標準化された臨床報告書を用いて、人口統計学的、臨床的、生物学的、組織学的、遺伝学的特徴、および試みられた治療とその有効性(理想的な環境や条件下)について、後方視的にカルテレビューを実施した
Literature review
  • 過去に発表されたDADA2症例を特定するため、システマティックレビューを行った
  • ①Medline (PubMed) ②Embase ③Web of Scienceの3つのデータベースをスクリーニングししている
  • DADA2のMeSH term(Medline)やEmtree(Embase)にリストがない場合、英語のキーワードを以下のフリーテキストで入力して検索した
  • “deficiency of adenosine deaminase 2 ” , “DADA2”, “ADA2 ” , “CECR1 mutation”
  • 2014年1月1日から2020年11月8日までに発表された論文を検索し、適格基準は以下の通り
    • 研究のタイプ: original article, short communication, letter to the editor, or case report
    • 言語: English or French
    • DADA2診断:
      • 診断時の年齢に関係なく、ADA2のホモ接合体または複合ヘテロ接合体の病原性変異体を示す遺伝子検査
      • ADA2活性が低いこと
    • 報告された患者の個々の特性の利用可能性
  • 研究対象となったフランス人患者の中には、既に過去の論文で報告されているものもあった
    • その結果、重複を避けるため、これらの論文は、他の症例が報告されていない場合は除外した
  • 系統的な文献調査から得られた患者の人口統計学的、臨床的、生物学的、組織学的、遺伝学的特徴を、標準化されたグリッドを用いて収集した
  • 論文執筆時の患者の現在の年齢および疾患発症日(2014年の最初のDADA2記述の前または後)は、報告された診断時年齢あるいは公表時年齢が入手可能な場合はそれを用いて推定した
Classifications
DADA2のプレゼンテーションに対応する症例の分類
  • 各症例(仏語および文献調査)は,DADA2 で報告されている以下の6つの臨床像を考慮し,臨床像ごとに分類された
    • 全身性血管障害で、中枢神経系(CNS)・末梢神経系(PNS)・消化器系・腎臓のうち少なくとも1つの皮膚外病変が必要なもの
    • Isolated skin vasculopathy 孤立性皮膚血管障害
    • Symptomatic HID 症候性液性免疫不全
    • Severe central cytopenia related to PRCA or another type of BMF PRCAまたは他のタイプのBMFに関連した重度の中枢性血球減少症
    • Autoimmune cytopenia 自己免疫性血球減少症
    • Lymphoproliferation, either polyclonal or clonal リンパ球増殖でポリクローナルまたはクローン性
  • DADA2の分類基準についてはサプリメントデータを示す(supplymentデータは手に入らず)
  • あるの症例がこれらのプレゼンテーションの一つに対して基準を満たさない場合、”その他”に分類した
  • これらのプレゼンテーションの2つ以上が該当する場合は、最も臨床的意義の高い症例が選択された
臓器病変での臨床強度の分類
  • 各患者について、主要な臨床症状とは無関係に炎症、血液学的異常、免疫異常が頻繁に共存する場合を考慮し、著者らはDADA2の6つの主要な臓器侵襲を以下の評価項目を用いて、臨床強度の4段階評価(absent, mild, moderate and severe)で評価した
    • 皮膚症状
    • 神経・血管症状
    • 消化器症状
    • 体液性免疫不全
    • 血液学的症状
    • リンパ球増殖
  • これら6つのDADA2症状の評価に使用された基準を下図に示す
ADA2変異での分類
  • 残存酵素活性のレベルに関する遺伝子型-表現型の関連がDADA2において証明された J. Allergy Clin. Immunol. 2020;145(6):1664–1672.e10 Jan 13.
    • 方法:in vitroでトランスフェクトした293T細胞を用いて評価したADA2活性に対応するADA2変異体を分類
    • 本研究では、ADA2変異を3つのカテゴリーに分類
      • type A:野生型ADA2と比較して3%の酵素活性が残存する低形成のミスセンス変異
      • type B:最小限の活性(3%未満)の残存するミスセンス変異
      • type C:酵素活性が全くないインデルとナンセンス変異
    • 遺伝子型に基づいて、各患者は6つのカテゴリー(AA、AB、AC、BB、BC、CC)のいずれかに割り当てられ、これは両変異の予測される機能カテゴリーに反映された
    • このアプローチから、著者らは、残存ADA2活性が低いと予測される遺伝子型カテゴリーが、重度の血液学的病変を有する患者でより頻繁に見られることを証明した
    • 著者らはまた、遺伝子型と残存ADA2活性はDADA2表現型への影響を通して、発症年齢や診断年齢にも影響を及ぼすと推測した
  • 本研究ではこの論文で報告されたデータを用いて、変異体の同じ分類を使用した
本研究の目的
  • 主目的:成人期に診断されたDADA2患者の臨床的および遺伝的特徴を、小児期に診断されたDADA2患者と比較すること
副次的な目的
  • 成人期発症の DADA2 患者と小児期発症の DADA2 患者を比較
  • DADA2の血管障害性の表現型を持つ患者において、脳卒中の既往の有無で遺伝子型カテゴリーの分布を調査
Statistical analysis
  • カイ二乗検定
  • フィッシャーの正確確率検定

【Results】

Epidemiology
  • フランスの調査:女性8名、男性4名が登録され、そのうち6例は部分的な報告(患者#2,#3,#6,#8,#10,#11)、2例は広範囲に報告されていた(患者#4,#12)Eur. J. Dermatol. 2018;28(6):847–8 Dec.
臨床的特徴
各患者の家系図、臨床所見、放射線所見
各患者の詳細な説明はsupplyment dataに記載(supplyment dataは手に入らず)
システマティックレビュー:
  • 655の文献をスクリーニングした結果、79の論文で報告された合計294人のDADA2患者が含まれた
    • 診断時年齢別の主な臨床症状はsupplyment dataに記載(supplyment dataは手に入らず)
全コホート:
  • 全体で306例のDADA2の症例が含まれ、女性の男性に対する比率は0.92であった
  • 発症時(DADA2の最初の症状)および診断時の年齢中央値はそれぞれ女性5.0歳[1.2-11.0]および男性15.0歳[8.0-23.0]であった
  • 8人の患者は死後に診断された
  • 228名の民族統計
    • European Caucasian / White American ヨーロッパ系白人/アメリカ人 90名
    • Turkish トルコ人 44名
    • Georgian-Jewish グルジア系ユダヤ人 19名
    • Middle Eastern 中東 14名
    • South Asian 南アジア 44名
    • North African 北アフリカ 5名
    • East Asian 東アジア 4名
    • South American 南アメリカ 2名
    • Central American 中央アメリカ 2名
    • Southeast Asian 東南アジア 1名
    • Sub-Saharan African サブサハラアフリカ 1名
    • Malagasy マラガシー 1名
  • 診断時の年齢に関するデータが得られた283名の患者
    • 成人期に診断 140/283名中(49.5%)
    • 小児期に診断 143/283名中(50.5%)
    • 成人期に初発症状があったDADA2 38/283名中(13%)
    • 小児期に初発症状があったDADA2 245/283名中(87%)
      • 小児発症DADA2患者245名中215名においては、発症時年齢と2014年(DADA2初回報告時)の正確な年齢の両方を抽出できた
    • これらの215人の患者のうち、68人(32%)は2014年に16歳以上であったため成人期に診断を受け、21人(10%)は2014年に16歳未満であったが成人期に診断を受け、126人(59%)は小児期に診断された
DADA2 の診断時年齢による臨床的特徴
Cutaneous involvement
  • 両群でlivedo racemosa分枝状皮斑が最も多く、その他に成人群では小児群に比べ,以下の症状が多く見られた.
    • nodules結節(18.6% vs 9.1%, p = 0.025),
    • ulcers潰瘍(20.7% vs 3.5%, p < 0.0001),
    • purpura紫斑病 (7.1% vs 0.7%, p = 0.005)
    • Raynaud phenomenonレイノー現象(14.3% vs 5.6%, p = 0.016)
Neurological involvement
  • 虚血性脳卒中はDADA2の神経症状で最も多かったが、成人発症群では発症群より頻度が低かった(27.9% vs 39.9%,p = 0.044)
  • 出血性脳卒中の頻度は低く、両群間に有意差はなし(adult 13.6%対 child 19.8%、p=0.36)
  • PNS末梢神経病変に関しては、末梢神経障害に関しては、小児期よりも成人期に診断されたDADA2患者の方が有意に影響を受けるようであった(adult 22.1 vs child 9.1%, p = 0.003)
Gastrointestinal involvement
  • 消化管障害の症状に関して、両群間で唯一有意差があったのは、成人の診断群では消化管出血の頻度が高かった(10.0 vs 1.4%、p = 0.002)
Hematological and immunological manifestations
  • 貧血と好中球減少は、成人期に診断されたDADA2患者でより頻度が低かった(それぞれ29.3% vs 45.5%, p = 0.007 および 10.7 vs 19.6%, p = 0.047 )
  • HIDに関連する感染症の再発は、成人期の診断群では小児期の診断群の2倍の頻度であったが、統計的有意差にはなし(14.3 vs. 7.0% p = 0,054)
診断時年齢による主な臨床症状
Frequencies of presentations
  • 成人と小児を比較すると,成人発症例では血管性疾患(77.9%対62.9%,p<0.001)が有意に多く,中心部の高度細胞減少を伴う血液性疾患(10.0%対20.3%,p=0.02)は少なかった
  • 成人と小児を比較すると,成人発症例では血管性疾患(77.9%対62.9%,p<0.001)が有意に多く,中心部の高度細胞減少を伴う血液性疾患(10.0%対20.3%,p=0.02)は少なかった
  • 血液学的症状では、両群ともPRCAの割合は同等であった:成人群では6/14(43%)、小児群では16/29(55%)(OR: 0.62 [CI95: 0.14 – 2.64]; p = 0.53 )
DADA2の臨床像の診断時年齢別の分布
Age-related variability of DADA2 presentations 年齢に関連したDADA2臨床像の変化
Vasculopathy
  • 両群間の最も重要な違いは、重篤な皮膚症状(潰瘍または壊死またはdigital ischemia趾虚血)の頻度で、成人の診断群に多く見られた(35 vs. 10%)
  • 血管障害の2つのサブセットを詳細に評価すると、重度の皮膚症状に加えて、成人の孤立性皮膚血管障害では、小児よりも中等度の血球減少症を示す頻度が高かった(38 vs. 8%)
  • 全身性血管障害を伴う成人では、中枢神経系の病変が少なく、脳卒中も小児に比べて少なかった(54 vs. 81%)
  • これは、より重篤な消化器系(19%対10%)や皮膚病変とは対称的である
  • 全身性血管障害を有する小児では、液性免疫の異常がより多く認められた(44小児%対26%成人)
  • しかしながら、その差は免疫グロブリンの種類が一つ以上低下したことによるものであり、臨床的な影響はない
Cytopenia of central origin 中枢性の血球減少
  • 興味深いことに、DADA2の血液学的表現型が中枢性の血球減少を示す成人は、小児よりも症候性HIDの頻度が高かった(29 vs. 7%)
  • 興味深いことに、DADA2の血液学的表現型が中枢性の血球減少を示す成人は、小児よりも症候性HIDの頻度が高かった(29 vs. 7%)
  • 逆に、炎症性血管の現象は少なく(21 vs. 37%)、その主なものは、軽度の皮膚病変(14%)と再発のない虚血性脳卒中(14%)だけであった
Humoral immune deficiency 液性免疫不全
  • 臨床症状が前面にでている症候性HIDを伴うDADA2の免疫型は稀であり、成人期と小児期の診断のそれぞれ5.0%と2.8%であった
Lymphoproliferation リンパ球増殖に関連したDADA2の症例
  • 成人期診断群 5例
    • clonal T-cell large granular lymphocytic leukemia (LGL) クローン性T細胞性大顆粒リンパ球性白血病(LGL)2例
    • olyclonal lymphoproliferationポリクローン性リンパ球増殖症1例
    • EBV-driven lymphoproliferative diseaseEBV起因性のリンパ増殖症1例
    • Hodgkin lymphomaホジキンリンパ腫(幼少期に発症)1例
  • 小児期診断群
    • 多クローン性リンパ増殖症5例
    • ホジキンリンパ腫2例
    • 非クローン性LGL2例であった
  • DADA2の臨床症状別主要6臓器病変の詳細(下図)
  • 成人発症と小児発症のDADA2の比較
    • figureはsupplyment dataに示されている(supplyment dataは手に入らず)
    • 患者306名のうち
      • 成人発症のDADA2が38名(12%)
      • 小児発症のDADA2が266名(87%)
      • 発症年齢に関するデータ 2例(1%)で欠落していた
  • 各病変の比較
    • 血管障害(adult 76.3 vs child 66.2%) 成人発症群>小児発症群
    • 中枢性血球減少症(adult 7.9 vs child 20.7%) 成人発症群<小児発症群
    • 重度の皮膚血管障害(adult 31.6 vs child 8.3%) 成人発症群>小児発症群
      • 主に皮膚潰瘍の頻度が高いことに起因していた
    • 虚血性脳梗塞の既往(adult 32.9 vs child 33.5%) 成人発症群≒小児発症群
    • 虚血性脳梗塞の再発(adult 32.6 vs child 18.8 %) 成人発症群小児発症群
Genotype in fl uence on age at diagnosis, age at disease onset and DADA2 phenotype 診断時年齢、発症時年齢、DADA2表現型に対する遺伝子型の影響
  • 合計202人の患者が、Leeらによって定義された6つの遺伝子型カテゴリー(AA、AB、AC、BB、BC、CC)に分類された
  • 遺伝子型カテゴリーと診断時年齢との間に関連はなかったが、高い残存ADA2活性(>3%)を有する
  • hypomorphic変異に対応するAA遺伝子型カテゴリーは、成人発症DADA2と有意に関連していた(adult 79 vs child 49 %)
  • DADA2の血管障害表現型を持つ患者のうち、139人が6つの遺伝子型カテゴリーに分類された
  • AA遺伝子型のカテゴリーは、脳卒中を発症していない患者において、発症した患者と比較して有意に多かった(adult 89% vs child 52%, p < 0.01)supplyment dataに示されている(supplyment dataは手に入らず)

【Discussion】

  • DADA2は、90%の症例が16歳以前に発症するが、現在はほぼ半数の患者が成人期に診断されている
    • 少なくとも、この現象は2014年という近年に本疾患が認識されていることに起因していると思われる
    • 成人期に診断される患者の割合は今後減少すると考えられており、理由としては臨床診断における次世代シーケンサーであるNext Generation Sequencing (NGS)技術がほとんどの先進国でごく最近広く利用できるようになったからである
    • しかしDADA2 の推定有病率に基づくと、相当な数の成人患者が診断されていないことになる
    • また、DADA2が後期発症・非典型・緩徐進行性の場合は、最大3分の1までの症例は、小児科医ではなく成人の医師によって診断されると予想される
  • 各症例(仏語で文献調査)は,DADA2 で以前に報告されている以下の6つの臨床像を考慮し,それぞれの臨床像によって分類した
    • DADA2は、成人発症では小児と同様に、ほとんどが血管障害として現れる
    • しかし、成人では血液学的表現型が犠牲になって、血管障害の頻度がさらに増加するようである
    • これらの発症頻度の違い以上に、成人期に診断されたDADA2には特異的な臨床的特徴がみられる
    • 成人で診断されたDADA2の血管障害は、重篤な皮膚や胃腸の病変を引き起こす可能性が高い傾向がある
    • 逆に、虚血性脳卒中は、小児発症では血管障害の80%に発生するが、成人発症では50%程度しか報告されていない
    • central cytopenia中枢性血球減少を伴う血液学的なプレゼンテーションでの成人発症例に関しては、血管障害の合併は小児ほど目立たず20%程度に過ぎない
    • 一方、BMFは成人血液学的表現型のほぼ1/3の症例で症候性のHID(液性免疫不全)と関連している
    • 成人と小児の診断の違いとしては、おそらく早期に診断していることと最も重症の表現型のマネジメントを反映しており、一般には小児期に遺伝子調査・介入を行うことになる
    • 実際、重症の中枢神経系血管障害は、軽症のものよりも早く単一遺伝子疾患が疑われることがある
    • 同様に、重症のBMFは、時には分子生物学的診断なしに早期の骨髄移植につながることがある
    • 一方で、症候性HIDや重度の皮膚血管障害のような他の特徴は、この病気の長期的な経過の結果を反映している可能性がある
    • ただ、成人特有の特徴の理由がなんであれ、その特徴自体が成人におけるDADA2の同定に役立つと著者らは考えている
  • 成人発症のDADA2に関して、最近発表されたインドからの大規模コホートでは、33人のDADA2患者のうち16人の成人発症例を含み、成人発症群と小児発症群では、全身症状、貧血、白血球減少がすべて成人発症群では頻度が低いことを除いて同様の臨床症状が見られた Arthritis Rheumatol. 2020 Sep 6.
  • これらの臨床症状の相違には著者らもしており、さらに今回は本研究に含まれる患者数が多いためか、成人発症DADA2に特異的と思われる臨床症状を追加で同定することができた
    • 実際に、成人発症群では皮膚潰瘍と末梢神経障害の頻度が高く、再発性の虚血性脳卒中と関節痛の頻度が低いことが観察された
    • これらの成人発症特有の臨床的特徴はすべて、成人発症のDADA2において観察される血管表現型の過剰出現と一致しているようだ
    • しかし、後者は小児発症のDADA2と比べて中枢神経系への関与が少ない
  • 残存ADA2 活性が低いまたはない遺伝子型は重篤な血液学的症状と関連している一方で活性が高い遺伝子型は血管障害と関連することが証明された J. Allergy Clin. Immunol. 2020;145(6):1664–1672.e10 Jan 13.
  • 変異の同じ分類を用いると、残存ADA2活性が高い遺伝子型は成人発症と相関するだけでなく、脳卒中の既往のないDADA2の血管病変を持つ患者に凝縮されていることがわかった
    • これらのデータは、ADA2が血管の統合性の維持に定量的に寄与しており、より高いADA2活性が重篤な神経学的イベントに対して保護的に働き、そして造血の維持には最小限の残存ADA2活性のみが必要であることを示唆している
    • 少なくともDADA2の血管病変が原因のプレゼンテーションの場合は、ADA2活性の残存に関連する疾患の血管の重症度は、発症年齢のばらつきを順番に説明すると思われる

limitations

  • 異なるDADA2表現型の頻度の評価が妨げられた可能性があり、以下の2つのバイアスが考えられる
    • 1) DADA2がBMFやリンパ球増殖の原因として十分に認識されていないこと
    • 2) 最近になってやっと臨床診断の補助としてNGS技術が幅広く使用されるようになった
    • この2つのバイアスは、BMF・リンパ増殖・この疾患の他の稀な表現型の真の有病率を過小評価する原因となる可能性がある
      • 結果として、非血管障害性表現型を持つ患者の数が比較的少ないために、これらの特異的表現型に関連する著者らの知見の頑健性が制限されることになる
  • しかしながら、これらのバイアスはおそらく大人も子供も等しく影響し、両者の違いを説明するものではない
  • フランス人患者の研究に関しては、自己炎症に特化した遺伝子研究所との共同研究により、DADA2の血管型が過剰に報告されたことが原因であると考えられる
    • 全国的に症例を集めることで、このバイアスを取り除くことを試みた
  • 最後に、患者の中には2種類以上の重篤な症状を示すため、症例を主要な臨床プレゼンテーションに分類することは、この疾患の複雑性を不完全に反映してしまう可能性がある
    • このlimitationは、各患者の6つの主要臓器の病変を詳細に記述することで、少なくとも部分的には相殺されているが、臨床プレゼンテーションと主要臓器病変の評価は、特に文献から得られた患者におけるデータの異質性によって影響を受けた可能性がある