Journal Club 雑記

慢性肉芽腫症(CGD)患者の病態生理・臨床的特徴【2018年】

Chronic granulomatous disease 2018: advances in pathophysiology and clinical management. LymphoSign Journal , Volume 6, pp 1-16

 

【Introduction to chronic granulomatous disease (CGD)】

  • CGD 慢性肉芽腫症は自然免疫系の稀な遺伝性欠損疾患であり、北米では出生児4-5人/100万人が罹患している
  • この疾患は、重度の再発性の細菌・真菌感染症および肺・消化管・尿路に多い過炎症の合併症を特徴とする
  • CGDはphagocytic cellsのthe 5 NADPH oxidase subunitsのいずれかが欠損または機能不全となることで発症する
  • 生理的には、好中球・単球・マクロファージ・活性化したオキシダーゼによる刺激が電子をNADPHから酸素分子へ移動させ、short-lived superoxide寿命の短いスーパーオキシドO2、いわゆるoxidative burstオキシダティブバーストを生成し、microbicidal reactive oxygen species(ROS)殺菌的な活性酸素へ変化する(拡散性の高い過酸化水素: H2O2など)
  • CGDではO2の生成することができず、H2O2の形成することができない
検査方法
  • The quantitative dihydrorhodamine 123 (DHR)を用いたフローサイトメトリーアッセイ
    • 現在最も正確なCGDの診断testであり、H2O2を検出できる
  • nitroblue tetrazolium (NBT) dye test
    • O2-を検出し定性的で識別性は低いが、まだ臨床で使われている

【Etiology and pathophysioloy of the disease】

  • phagocyte NADPH oxidase (phox) 食細胞NADPHオキシダーゼ複合体の研究が進み、CGDは2つのGenetic defects遺伝子異常と定義されている
    • 好中球による病原体クリアランス
    • マクロファージによるdying host cellsのクリアランスの欠損
Genetic defects(北米での研究)
  • gp91phoxをコードするX-linked遺伝子の機能喪失変異
    • CGDの70%はNADPH複合体の電子伝達酵素サブユニットであるgp91phoxをコードするX-linked遺伝子の機能喪失変異によって引き起こされる
  • gp91phoxを制御する細胞質タンパク質(p47p67p40phox)の変異
  • gp91phoxを安定化する膜結合タンパク質p22phoxの変異
    • 残りの30%の症例は、上記のいずれか
  • p47phoxをコードする遺伝子のA/R mutationsは20%の症例で認められるCGDの2番目に多い原因でもある
  • 最近発表された6番の要因となるEROS(以下説明)をコードするCYBC1遺伝子のA/R欠損機能変異がある
    • 好中球、単球、マクロファージに高発現している膜貫通型タンパク質
    • 細胞膜やファゴソームにおけるgp91phox – p22phox ヘテロダイマーの発現に重要なシャペロンであり、ROS産生に必須
    • EROS欠損マウスはすぐに感染症にかかる
    • 血縁関係にある家族でのEROS欠損のA/R CGD患者の報告もあり、造血幹細胞移植(HSCT)が成功している
  • CGD患者では遺伝子変異を同定することは重要であり、予後予測は重要
  • Residual O2/H2O2の生成(ほとんどのp47phoxおよびp40phox欠損症
  • O2/H2O2生成の欠如(ほとんどのケースでgp91phoxdeficiency)と比較して感染症および死亡率のリスクがより低い

Impaired microbial killing

  • 健常者では好中球のNADPHオキシダーゼは殺微生物活性酸素の産生に直接的に関与する以外に、一次顆粒(アズール顆粒)から殺微生物プロテアーゼ(エラスターゼやカテプシンGなど)の遊離と活性化を間接的に担っている(上記の図参照参照)
  • この2つのメカニズムは共同に働いて、phagocytic vacuolesの好中球が病原体の殺傷/消化するが、この過程がCGD患者では欠損している
  • O2を産生する好中球の一部は、最終的に自身の細胞内膜を分解させて、脱凝縮クロマチン(DNA/ヒストン)とmicrobicidal granule proteinsを細胞外空間に放出し、NETを形成する
  • 現在、pus膿の大部分はNETに囲まれた好中球で構成されていることがわかっている
  • 放出されたNETは殺傷プロセスを数時間にわたって継続しており、貪食できないほど大きな微生物(細菌の凝集体や真菌の菌糸など)も捕捉して殺傷することができる
  • この大昔から存在する抗菌性の防御機構は、CGD患者では欠損している
  • 遺伝子治療によって回復させることができる

Excessive inflammation

  • 健常者では、dying (apoptotic) cellsはマクロファージによって迅速に除去され、“immunologically silent”免疫学的にサイレントな方法で、debrisによるhyperinflammation過剰炎症を防ぐことができる
  • Apoptotic neutrophils アポトーシスを起こした好中球はその表面膜にoxidized phosphatidyl serine (oxPS)酸化ホスファチジルセリンを表出化する。それらはマクロファージ上のoxPS受容体を通して好中球が食細胞胞に取り込まれる

生理的なNADPHオキシダーゼの機能概要

efferocytosisの概要

  • LC3-associated phagocytosisは、抗炎症性サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL)-10)の放出を伴う
  • CGD患者では、感染巣によって肉芽腫形成が刺激される
  • Chronic granulomatous inflammationはvital organsを危険にさらして、さらなる病的状態を引き起こす可能性がある
  • 好中球のアポトーシスおよびマクロファージによるそれらのクリアランスは、CGDにおいて遅延する
  • dying cellsのクリアランスの欠陥は、炎症性サイトカイン(IL-1βやTNFαなど)の過剰な生成と自己炎症につながる
  • 炎症の解消を媒介する承認された抗糖尿病薬であるpioglitazone (PIO)ピオグリタゾンによる実験的短期治療中に、 CGD患者で、ヒト単球のdefective efferocytosisが回復することがある。
    • この治療は、食細胞のミトコンドリアROS産生の増強を伴う
      • ミトコンドリアROS産生ではNADPHオキシダーゼの欠陥を迂回する
    • PIOはマウスCGDにおける殺菌能力も回復させるため、CGDの乳児に使用し、造血幹細胞移植の定着前に難治性の細菌性肺膿瘍を克服した
    • この介入の有効性と安全性に関しては、造血幹細胞移植の適応がある治療抵抗性CGD患者における、PIOのさらなる研究が必要である

 

【Clinical manifestations of CGD】

  • CGDは、重度の感染症と炎症亢進の両方の特徴をもつ
  • CGDの経過中、最初の感染は最初の炎症症状よりもはるかに早く起こる(年齢の中央値で0.9対11.3歳)
  • 成人では感染が主要な死因として懸念される一方、青年期および成人期には炎症事象が出現し、優勢となる

Bacterial and fungal infections

  • 北米およびヨーロッパでは、CGDにおける典型的な感染症は、限られた5つの生物により生じる
    • taphylococcus aureus (lymphadenitis, liver abscess, pneumonia rarely) 黄色ブドウ球菌(リンパ節炎、肝膿瘍、まれに肺炎)
    • Burkholderia cepacia (necrotizing pneumonia, sepsis) (壊死性肺炎、敗血症)
    • Serratia marcescens (sepsis, osteomyelitis) (敗血症、骨髄炎)
    • Nocardia
    • Aspergillus spp. (subacute pneumonia, dissemination to brain and bone) (亜急性肺炎、脳と骨への播種)
  • 侵襲性糸状菌感染症は、芽胞の吸入により肺炎を起こし、肋骨、脊椎、脳などに転移することがある
  • これらはCGDの死亡原因として最も頻度の高い疾患である
    • Aspergillus fumigatusアスペルギルス・フミガータスが最も頻繁に分離される
    • Aspergillus nidulansアスペルギルス・ニデュランスはより炎症性で難治性の疾患を引き起こす
      • 死亡率は、アゾール系薬剤による治療で減少する(voriconazole またはposaconazole)
      • 胸壁や脊椎に進展しているケースでは、感染組織の切除が必要となることもある
  • 旅行中のCGD患者においては他の地域で流行している新興感染症に関しても上記のリストに追加する必要がある
    • Tuberculosis (TB)は高リスク。またBacillus Calmette-Guérin (BCG) vaccinationワクチンは、ワクチン接種部位の排液性皮膚病変、局所リンパ節炎(「BCG炎」)、よりまれな播種性疾患(「BCG sepsis)などの重症疾患を引き起こす
    • Non-typhoidal Salmonella非チフス性サルモネラによる血流感染
    • Chromobacterium violaceum
    • Burkholderia pseudomallei
    • Leishmania infantum

Inflammatory manifestations

  • CGDの古典的な炎症性合併症
    • 肺: interstitial lung disease
    • 消化管: granulomatous colitis
    • 尿路: granulomatous cystitis
  • CGDの肉芽腫性大腸炎はクローン病のミミックであり、CGD患者の最大2分の1まで影響する
    • 大腸内視鏡検査では診断生検が可能であり、その場合は上皮性肉芽腫と色素を含んだマクロファージが検出される
    • 初期治療としては副腎皮質ステロイド
  • Aspergillusの芽胞を含むmulch, compost, or dead leavesのエアロゾル大量吸入によって引き起こされる劇症型マルチ肺炎
    • 芽胞に対する過剰な炎症反応がおこることで、粒状の浸潤と人工呼吸を必要とする低酸素症が生じる
    • 治療法としては、ボリコナゾールとメチルプレドニゾロンの静脈内投与が救命となる
  • 肝膿瘍後の非出血性門脈圧亢進症:中心静脈/門脈の抹消と結節性再生過形成は、最終的に門脈圧亢進症を引き起こす
    • 長期間の発熱を伴うS.aureusによる肝膿瘍は、過剰な外科的介入を避けるため、ステロイドと併用した抗生物質による治療が必要
  • CGD の手術部位はしばしば感染し、瘻孔の治癒が非常に遅くなるため、早期に抜糸し、ドレーンを長期留置しないように留意する
    • 剥離を伴う過度の創部の肉芽はステロイドに反応する
  • 自己炎症に加え、CGD では自己免疫疾患のリスクが高く、ループスに類似した症候に重点が置かれている
    • 350人以上のCGD患者を対象としたnational US registryでは、0.5%の患者がSLEの診断基準を満たし、2.7%がdiscoid lupusの基準を満たしている
    • 古典的なSLEは、CGD患者やp47phox欠損マウスでも高発現しているI型インターフェロン経路の転写物の過剰発現によって特徴付けられる
    • これはNADPHオキシダーゼ由来の活性酸素がI型インターフェロン経路の活性化を弱めるフィードバック機構として関与し、おそらく自己免疫の予防につながると考えられる

Clinical presentation in adults

  • フランスの小児CGD患者80人のコホートの長期転帰に焦点を当てた初の全国規模のレトロスペクティブ研究において、成長後のCGD患者は小児期と同様の割合と特徴の重症感染症および炎症エピソードを示した
  • 成人期に観察された小児CGDの主な後遺症は以下の通り
  • 重篤な感染症、炎症、および繰り返されるステロイド治療の結果としての成長不全。
  • 肺感染症を繰り返した後の拘束性呼吸不全による慢性呼吸困難
  • 炎症性大腸炎、腸管狭窄、肛門周囲瘻孔による慢性消化器系合併症で、QOLに大きく影響してしまう

Clinical presentation in carriers of X-linked CGD

  • X連鎖型CGDの保因者における臨床像
  • X連鎖型CGDの女性キャリアの多くは無症状。中には重症または再発性の感染症、あるいは自己免疫疾患(discoid lupus erythematosus)または炎症性疾患(炎症性腸疾患など)の症状を呈する
  • gp91phoxをコードするCYBB遺伝子のあるXR-CGDの女性保因者では、発生の初期に各細胞でランダムにサイレンシングされ、1つのX染色体のみが発現する(ライオン現象)
  • CYBB変異X染色体により不活性化された好中球は正常なO2産生を行うが、正常X染色体が不活性化された細胞はCGDの表現型を持つことになる
  • XR-CGDキャリア状態の女性93人を対象とした大規模な研究では、CGD型感染症のキャリアは、感染症のリスクと野生型アレルのskewed inactivation歪んだ不活性化(O2形成細胞が20%未満)の間に強い相関がある
  • これらのデータから、%DHR値が<20%の場合、キャリアではST合剤による予防を検討する
  • 一方、XR-CGDのキャリアにおける自己免疫・炎症症状の発現しやすさは、O 2 -の生成量とは無関係であった
  • しかしながら、自己免疫現象とキャリア状態そのものとの関連は、一般にXR-CGDキャリアが造血幹細胞移植の理想的なドナーではないことを示唆している