
Ultrasound evaluation of the hands and wrists in patients with systemic sclerosis: Osteophytosis is a major contributor to tender joints. Semin Arthritis Rheum. 2021 Aug;51(4):735-740.
【Conclusion】
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systemic sclerosis (SSc)全身性強皮症患者における高度な関節症状は主に炎症性関節炎に起因するわけではなさそう
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SSc患者では健常群と比べて骨棘を有する割合が高い
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骨棘の存在と重症度が、滑膜の肥大を伴う関節炎と高い相関を示した
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骨棘とそれに伴う反応性滑膜炎が、関節痛の重要な原因である可能性が示唆された
【Introduction】
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systemic sclerosis (SSc)全身性強皮症患者ではよく手や手首の疼痛を訴えることがあるが、原因を特定するのは難しい
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SSc患者は以下の末梢疾患の症状が組み合わさり痛みや機能障害の原因となる
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Raynaud’s phenomenonレイノー現象
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digital ulceration趾潰瘍
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calcinosis石灰沈着
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contractures拘縮
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acroosteolysis先端骨溶解
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carpal tunnel syndrome手根管症候群
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articular and tendinous pathology関節および腱の病理
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Inflammatory arthritis 炎症性関節炎
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これらの有無を識別するのは免疫抑制療法を行う上で重要である Rheumatology (Oxford) 2010;49(12):2357–61.
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初期の臨床研究では、SScにおける炎症性関節炎の有病率は16~88%と幅広く、これは検査による関節の圧痛と腫脹があるかどうかで定義している J Rheumatol 2010;37(7):1488–501.
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SScの身体検査における真の炎症性関節炎の検出は、skin tightening皮膚硬化や拘縮によって、関節、腱、背景にある滑膜炎の触診が複雑になり不明瞭になる可能性がある
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musculoskeletal ultrasoundは炎症性関節炎に対する高い感度と特異度をもつ非侵襲的なツールであり、所見は以下の通りである RMD Open 2017;3(1):e000428.
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Bモード画像によるsynovial hypertrophy滑膜の肥大、effusions滑液貯留、びらんの所見
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Power Doppler (PD) でhyperemia血流シグナルを示す滑膜内のactivity
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重要なことであるが滑膜肥大や滑液貯留はtissue injury組織損傷, crystalline arthropathies結晶性関節症, and osteoarthritis変形性関節炎といった疾患でも程度の差はあれど認められる
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US上の軽度の滑膜肥大は健常者でもよく観察され、207名のstudyで健常者の48%に検出される[6]
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しかし、PDの血流シグナルは健常者では一般的に認めない
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USでの先行研究ではいくつかのSScコホートでsynovitis (25-58%) tenosynovitis (27%-45%)と高い有病率を示しているが、GSやPDでのスコアリングでの滑膜炎の定義が様々である
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またほとんどの研究はUS所見での滑膜肥厚の重症度は考慮しておらず、TJs, SJs, clinical findings, and ultrasound pathology by-joint and by-handの関連を評価した研究もない
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ゆえにSScにおける炎症性関節炎の真の有病率および疼痛の誘因に関しては不明確なままである
今回の研究目的
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院内で継続的にフォローしているSSc患者の炎症性・非炎症性病変を評価において、USでのGSやPD所見の重症度を考慮し、さらに臨床所見での関節別および種子別の関連性を評価すること
【Methods】
患者:2013年ACR/EULAR基準を満たす連続したSSc患者群43人と年齢バランスのとったコントロール群35人(コントロールはOA以外のリウマチ疾患既往がある患者は除く)
評価者:米国で5年以上のUS経験を持つrheumatologistがStanford University Medical Centerのが前向きに診察した
除外基準:両側のフルのUS評価に耐えられない患者
評価条件
- ultrasound examiner(US検査技師)は患者の過去診療情報は盲検下で快適温度の室内
- Bモード評価時はプローブの周波数 12MHz
- PD評価時はプローブの周波数 7.7MHz
- pulse repetition frequency 0.5-0.8MHz
評価部位
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1-5th dorsal metacarpophalangeal (MCP)
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2-5th volar MCP
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proximal interphalangeal (PIP)
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distal interphalangeal (DIP) joints
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associated flexor tendons
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radial aspect of the 2nd MCP 及び ulnar aspect of the 5th MCPのcortical irregularities
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wrist(European League Against Rheumatism protocolsに基づいて) Ann Rheum Dis 2017;76:1974–9.
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radiocarpal joints
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intercarpal joints
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radioulnar joints
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flexor and extensor tendon compartmentsMedian nerve cross sectional area正中神経断面積:median neuropathy正中神経障害との関連あり
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Ulnar Artery Occlusion (UAO) : Raynaud’s phenomenレイノー現象、calcinosis石灰沈着、digital ulcers指趾潰瘍と関連あり Arthritis Care Res (Hoboken) 2017;69(4):543–51.
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評価項目
- 手や手首のTender joints (TJ) and swollen joints (SJ)
- modified Rodnan skin score (mRSS)
- contractures 拘縮
- nailfold capillary changes 爪甲毛細血管の変化
- digital ulcerations 指趾潰瘍(既往含める)
- Erythrocyte sedimentation rate (ESR)
- C-reactive protein (CRP) levels
- 手のXp写真
US画像の評価方法
- 3人の技士が集約的にレビューしており、患者データは盲検化されている
- 基本は2人の技士がjoints と tendonsの両方でgray scale severity score (GS, 0-3) and PD score (0-3)でスコアリング
- Osteophytes骨棘はtwo planes2つの平面で見られるcortical protrusions皮質の突起として定義された[15]
- Erosionsびらんはtwo perpendicular planes 2つの垂直な平面における骨表面の不連続性として定義された
- GS0とGS1の評価者による違いは多かったが、議論しても合意しない場合は3人目の技士によって最終スコアが決定した
- 炎症性関節炎:少なくとも一つの領域でGS>0とPD>0の組み合わせがあること
統計解析
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GS、PD、骨棘、びらんについては、各関節部での全観察結果のうち、最大値を表記
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→例としてMCP volar articular GS score, MCP dorsal articular GS score, and MCP flexor tendon GS scoreのうち最大値
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各スコア間の相関をSpearman’s rank correlation Spearmanの順位相関で評価
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SSc患者とコントロールで骨棘の重症度を比較するためにWilcoxon rank-sum検定で評価
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SSc患者で骨棘が一般的であるかどうかは存在する/存在しない の二項対立でカイ2乗検定で評価
【Results】
患者特性

登録時の治療レジメン
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non-biologic DMARD 53.5%
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mycophenolate 27.9%
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azathioprine 2.3%
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methotrexate 7.0%
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hydroxychloroquine 25.6%
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それ以下はNSAID(14.0%)
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prednisone(9.3%)
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biologic DMARDs or JAK inhibitors(7.0%)
各患者の臨床所見と超音波所見の分布とグレード
GSとPDスコア:白=0、黄=1、橙=2、赤=3
圧痛関節、腫脹関節、びらん、骨棘は、白=なし、黒=あり

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SSc患者の44.2%にTender joints (TJ) が、62.8%にswollen joints (SJ)を認めた
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少なくとも1つの関節部位のGSスコアが1以上
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健常群の22名(62.9%)
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SSc患者の37名(86.0%)
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いずれかの関節領域でGSスコア毎の最高値の割合
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GS1:SSc患者の48.8% 健常群の57.1%
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GS2:SSc患者の30.2% 健常群の5.7%
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GS3:SSc患者の7.0% 健常群の0% (p=0.003)
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いずれかの関節領域でPDスコア毎の最高値の割合 (PDスコア>0は、SSc患者の8人(18.6%)
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PD1:SSc患者の4.7% 健常群の0%
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PD2:SSc患者の14.2% 健常群の0%
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今回の炎症性関節炎の定義(GS > 0 and PD > 0)に当てはまる患者は以下の通り

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SSc患者の8人(18.6%)、健常群は0人
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うちRF陽性は1人 ACPA陽性は0人
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17人のびまん性SSc患者のうち4人(23.5%)が炎症性関節炎を有していたのに対し、
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26人の限局性SSc患者のうち4人(15.4%)は炎症性関節炎を有していた
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5年未満の早期SSc患者のコホート12名のうち、炎症性関節炎を認めたのは1名(8.3%)
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GS>0の腱鞘滑膜の肥厚は、SSc群では健常群よりも頻度が高く(30.2%対8.6%、p=0.024)、どちらのコホートでもほぼ手首にのみ観察された
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先行研究では、SScでは線維性に見えるhyperechoic高エコーの腱鞘であり、手首伸筋領域で最も顕著である[7,24,25]
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60.5%が手首の伸筋腱にこの所見を認め、その内訳はびまん性、限局性いずれの疾患にも偏りはなかった
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尺骨動脈閉塞(UAO)は16人のSSc患者(37.2%)に認められ、健常群では認めなかった
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平均正中神経面積はSSc群では12.1mm2であったのに対し、健常群では10.0mm2だった(p = 0.001)
骨棘に関して

骨棘は、TJを有するSSc患者の74%、GSを有するSSc患者の56.8%に認められた
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US所見での骨棘分布
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MCP 35関節
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PIP 9関節
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DIP 21関節
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PD+骨棘の組み合わせ
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MCP 3関節
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DIP 4関節
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指のびらん
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SSc患者の8名(18.6%)
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健常群はなし
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手XpではSSc患者10人(23.3%)に骨棘が、6人(14.0%)にびらんが認められた
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びらんのある患者のうち、4人(66.7%)はX線検査でびらん性変形性関節症と一致する所見を示した
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X線検査でerosive osteoarthritisを伴う2名の患者においては、コホートでPDの活動性と一致しており、最も高いGS重症度スコアを認めていた
臨床所見、検査所見、US所見間の関連性について

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GSの所見:SJsよりもTJsと強い一致を示した(κ= 0.72 [0.69, 0.76] vs 0.52 [0.47, 0.57])
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GSの重症度:SJsの重症度よりもTJsの重症度と大きな相関を示した(ρ= 0.47 vs 0.32)
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骨棘:GS(κ = 0.88 [0.86, 0.90] )とTJs(κ = 0.80 [0.77, 0.83] )と高い相関あり
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骨棘の重症度:GS(ρ= 0.59, p < 0.001 )とTJs(ρ= 0.49, p < 0.001 )と相関あり
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TJsとSJsは、正中神経断面積、UAO、石灰沈着、趾潰瘍、mRSS、拘縮と相関なし
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RFとCCPのいずれもGS重症度>0、PD重症度>0、USで同定された炎症性関節炎と関連なし
【Discussion】
【Discussion】
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SSc患者における各関節の臨床検査と超音波検査の一致と相関を分析した最初の研究である
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この患者集団における関節症状は幅広く、圧痛関節(44.2%)と腫脹関節(62.8%)の高い有病率を認めた
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しかし、腫脹関節は圧痛関節と比較してGS滑膜変化との一致率が低く、SSc患者の身体所見の課題を提示することとなった
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SScの炎症性関節炎の評価において、腫脹関節の数は臨床的有用性が低いことも示唆した
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病理学的な滑膜肥厚のcut off値をGS2というより厳しい値にしたところ、超音波検査でSSc患者の37.2%に病理学的な滑膜肥厚が確認された
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OMERACT(Outcome Measures in Rheumatoid Arthritis Clinical Trial:rheumatology全般の評価基準などを検討している2年に1回開催されている会のこと)では超音波検査による滑膜炎をGS 1とPD 0と定義し、GSだけで滑膜炎を特定するのに十分であるとしている RMD Open 2017;3(1):e000427.
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PD 0に関してはPD感度の低いUS機器での不均一性を考慮している
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しかし、その後の大規模な研究で、健常者の48%にこの定義に基づく滑膜炎が同定されており、これらのGS・PD基準を用いて炎症性関節炎を同定することが困難であると強調されている Ann Rheum Dis 2016;75(10):1819–23.
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ゆえに今回のstudyではより厳しいGS>0とPD>0の両方を満たす基準が設定された
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この定義では、SSc患者と対照者のコホートで活動性炎症性関節炎の有病率は比較的低い(18.6%)ことが示された
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一方で、SSc患者では健常群と比較して骨棘の有病率が高い(48.8%対22.9%、p=0.018)。
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Cuomoらの研究でも同様の結果を認めており、超音波検査によって検出された45人のSSc患者の58%に骨棘があることが報告されている Rheumatology (Oxford) 2009;48(11):1414–7.
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先行研究にて孤立性変形性関節症および退行性関節疾患患者におけるGSの変化が示されている[17,18]
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Keenらの研究ではOA患者の46%にGS滑膜炎(OMERACTによる滑膜肥大と滑液貯留の複合として定義)を認めた[18
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erosive osteoarthritis (EOA)びらん性変形性関節症(増殖性骨棘と軟骨下びらんによって特徴付けられるOAのサブセット) の患者においては非びらん性OA患者と比較して、超音波上の炎症徴候を有する傾向がさらに高かった Ann Rheum Dis 2013;72(6):930–4.
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本コホート研究では全体的にびらん性OAを示唆する4人のSSc患者症例があり、そのうち、指の重度の骨棘および顕著な滑膜を認め、PDで血流シグナルを伴う症例、伴わない症例があった
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これらの4人の患者のXp所見では、“gull-winging”の外観を伴う境界不明瞭な中央軟骨下のびらんがあり、びらん性変形性関節症に一致する重度の骨棘とankylosis骨硬直を伴っていた Osteoarthr Cartil 2009;17(10):1283–7.
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健常群ではどの患者においても観察されなかった

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55歳以上を対象とした先行集団ベースの研究では、X線検査によるEOAの有病率は一般集団で2.8%と推定された Ann Rheum Dis 2011;70:1238–42.
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EOAなしの平均年齢は66.1 ± 7.0歳、EOAありは68.5± 6.5歳であった
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今回の研究の目的はEOAの有病率を評価するためのものではないが、SSc群での9.3%という有病率が増加していたのは、我々の研究では患者の平均年齢は58才と若いことと関係しているのかもしれない
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これまでのSSc患者のUS研究で示された滑膜肥大の有意な割合については、従来の炎症性関節炎とは対照的に骨棘によるものかもしれない可能性がある
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先行研究のSSc患者は、リウマチ性疾患とは別のOAを併発している可能性があるが、健常群と比べて、SSc患者の骨棘の有病率と重症度が高い
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これらの過程に関連性があるのかもしれない
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SScの関節疾患は、退行性変形性関節症からびらん性変形性関節症、そしてより典型的な炎症性関節炎の重複に至るスペクトラムが存在する可能性がある
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SSc患者において、健常群と比較して正中神経断面積の増加を認めたが、同じ手関節の圧痛や腫脹とは相関がない
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UAO、mRSS、石灰化、趾潰瘍および拘縮に関してもは、同じ手関節の圧痛や腫脹とは相関がない
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正中神経断面積の増大は手根管症候群と相関する
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UAOはレイノー現象、石灰沈着症、趾潰瘍とと相関する
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しかしながらこれらは関節痛に有意な影響を与えないようである
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本研究のSSc患者の55.8%はDMARDS(MMFを除く34.9%)も服用しており、炎症性関節炎におけるPD活性を低下させることができた Dis Mark 2015;2015:325909.
limitations
- the cross-sectional study design 横断的研究であるため、疾病期間や経時的変化を考慮していない
- 手首は3次元的に複雑であり、エコーでは皮質面をすべて見ることができないため、この部位でのびらんや骨棘の定量化は行っていない