Rhuematology

【Kelley】GPAの臓器病変まとめ

Kelleys Textbook of Rheumatologyより

Granulomatosis With Polyangiitis(GPA)多発血管炎性肉芽腫症の臓器症状をおさらい

【Clinical Manifestations】

臓器病変に発症率に関しては様々な大規模コホートで、以下の表とほぼ一致している

気道炎症
Inflammation in the upper airway上気道の炎症が最も一般的な初期症状であり、glomerulonephritis or alveolar hemorrhageに進行する経過が現在も一般的であるが、ANCAの検査ができるようになってから、“localized” or “limited”な段階での診断が可能になってきている
上気道や下気道の炎症は血管炎とsimultaneously同時におこることもあれば、数年先行して発症することもある
上気道の炎症は以下のように多様な症状で起こる。
  • Recurrent epistaxis 再発性の鼻出血
  • mucopurulent nasal discharge 粘液性の鼻汁
  • bloody nasal crusting 血性の鼻痂皮
  • Inflammation of the paranasal sinuses causing pain 疼痛を引き起こす副鼻腔炎
耳鼻咽喉
nasal septum鼻中隔は非常に危険であり、septal perforation鼻中隔穿孔が進行して崩壊や特徴的なsaddle-nose “鞍鼻 “の変形に進行することがある
Bone erosion骨びらんはどの部位にでも起こるが、頻度は低い
Subglottic involvement声門下の病変は15%程度で、特に若年では閉塞を起こすこともある
眼病変
目や眼窩病変はMPAやEGPAよりも顕著で、30-60%
程度の頻度でおこる
Conjunctivitis結膜炎やepiscleritis上強膜炎(強膜表層の炎症)は頻繁におこるが、疼痛はないので、患者には侵襲はない
以下3つの写真はwikipediaより引用
scleritis強膜炎は疼痛があり、治療をしなければ視力障害をおこす
他にも一般的でないが以下の眼病変を引き起こす
  • Retinal vasculitis 網膜血管炎
  • uveitis ぶどう膜炎
  • oculomotor nerve palsy 動眼神経麻痺
  • optic neuropathy 視神経症

lacrimal gland涙腺, sac涙嚢, duct涙管の炎症は10%の患者で見られ、過度の流涙や鼻涙管の閉塞を引き起こすことがある

Orbital pseudotumor 眼窩偽腫瘍は6−15%と比較的一般的な頻度で起こり、積極的な治療を行っても患者の50%が失明する

その他の頭頚部疾患
middle ear中耳やauditory tube聴官の炎症、耳管咽頭口の閉塞により、conductive hearing loss伝音性難聴やear congestion耳詰まりがおこる。
以下も起こるが頻度は低い
  • Oral ulcers 口腔内潰瘍
  • gingivitis 歯肉炎
  • auricular chondritis 耳介軟骨炎
肺病変
Pulmonary nodules肺結節はnecrotizing壊死性でしばしばcavitate空洞化する
よく全身性血管炎の前や非発生時に生じ、“localized” or “limited”なGPAの胸痛の特徴である
  • 肺結節は無症状あるいは咳を引き起こすだけ
  • Alveolar hemorrhage肺胞出血は生命を脅かす
  • pleuritis胸膜炎とendobronchial lesions distal to the subglottis声門下遠位の気管支内病変(気管支鏡検査でしか把握できない)もおこる
  • pulmonary fibrosis肺線維症 や bronchiectasis気管支拡張症はまれ
筋骨格系
関節炎はmono・oligo・polyのいずれもおこる
PMRやRA、SpAなど類似している場合がある

migratory arthralgias 移動性関節炎や arthritis of large joints大関節炎は激しい疼痛が数日続いたあとに消失し、その後すぐに他の箇所の関節に現れ、GPAでは比較的よくみられる

皮膚
Cutaneous small-vessel vasculitis皮膚の小血管炎は頻度は低いが、皮膚の小動脈炎がある
  • Purpura紫斑, papules丘疹, vesicles/ bullae小水疱/水疱, ulcers, digit ischemia指の虚血, subcutaneous nodules, and livedo racemosaがある
  • 特徴的な病変として病理学的にnecrotizing, palisading granuloma壊死性掌蹠肉芽腫を示す、superficial, nonerythematous cutaneous nodule表在性非紅斑性皮膚結節であるが、EGPAなどでもおこる
末梢神経障害は以下の二種類がある
  • a sensory polyneuropathy 感覚性多発神経障害
  • multifocal neuropathy (mononeuritis multiplex) with both sensory and motor deficits 感覚と運動の両方の障害を伴う多巣性神経障害
  • Neuropathic pain神経障害性疼痛は一般的だが、感覚障害に伴うもので、普遍的ではない
  • Cranial neuropathies頭蓋神経障害は頻度は多くはないが、感音性難聴を除いて病因の一つである
  • 脳卒中などの中枢性疾患はあるが、脳内動脈の血管炎はまれで、pachymeningitis肥厚性硬膜炎もよく知られている が一般的ではない
心・消化器
  • GPAでの心筋炎や消化器炎症病変はまれだが、強膜炎はGPAによる胸痛の原因として多い
腎臓
  • Glomerulonephritis (GN)糸球体腎炎は診断時点で多くの患者に存在し、経過で半数以上が罹患する。
  • 生検ではpauci-immune型で壊死性、半月体を認める
  • 腎機能は一週間で急激に悪化することもあれば、数年かけて緩やかに悪化することもある
  • 尿毒症やネフローゼ症候群が起こるまでは腎病変はしばしば無症候性であるが、ネフローゼ症候群で発症するのは少数である