Rhuematology

【Kelley】methotrexate (MTX)の作用機序まとめ

Kelleys Textbook of Rheumatologyより

methotrexate (MTX)の作用機序までのまとめ

KEY POINTS
  • methotrexate (MTX)メトトレキサートの作用機序はdihydrofolate reductaseジヒドロ葉酸還元酵素の阻害に加えて、アデノシンの遊離を促進することで炎症を抑制する
  • MTXは細胞内でポリグルタミン酸化されるため、長期の治療効果を有する
  • 15 mg/weekのdoseで使用する場合は12時間以内の分割投与あるいは皮下投与により効果は増強する
  • MTXに葉酸を併用することで、MTXの有効性を著しく低下させることなく、MTXの副作用の一部を軽減する
  • MTXのdoseは、腎機能の低下に応じて調整する必要がある。まれではあるがMTX pneumonitis肺炎は治療における重大かつ致命的な合併症となる可能性がある

Introduction

  • 1950年代にanti-proliferative effects抗増殖作用による悪性腫瘍の治療薬として導入された
  • 1960年代にpsoriasis乾癬およびRAへの使用が初めて報告された
  • 現在でもRAを初めとした他の多くのリウマチ性疾患にも使用されている

Chemical Structure

MTXは葉酸の構造類似体であり、pteridineプテリジン基とpara-aminobenzoic acidパラアミノ安息香酸の構造に置換がある

Actions of Methotrexate

MTX取り込み
  • MTXは葉酸アナログであるので、reduced folate carrier (RFC)を介して細胞内に侵入することができる
  • Leucovorinロイコボリンは同じRFCを利用してMTX取り込みと競合する
  • folic acid葉酸はfolate receptors (FRs)と呼ばれる別のtransmembrane receptors膜貫通型受容体群を介して細胞内に取り込まれる
  • FRは滑膜マクロファージを含む代謝活性の高い細胞で発現が上昇し,RFC経路とは別のMTX流入の第2の経路として機能する
MTX流出(毒性や反応性に関与)
  • MTXの排出はABCC1-4 とABCG2を介して行われる(これらはadenosine triphosphate (ATP)-binding cassette (ABC) family of transporters)
  • →遺伝子多型はこのトランスポーターに影響するため、MTXの反応性や毒性に差が出ると言われている
  • MTX、葉酸、ロイコボリンを細胞外に輸送しするmultidrug-resistance proteins多剤耐性タンパク質も同定されており、MTX耐性をもたらすといわれている
MTXのポリグルタミン酸化
  • 細胞内で、葉酸もMTXも、folyl-polyglutamyl synthetase (FPGS)という酵素によりpolyglutamationポリグルタミン酸化を受ける
  • モノグルタミン酸型からポリグルタミン酸型(Polyglutamation of MTX (MTX-PG))にすることで、MTXの流出を防ぐ
  • さらにMTX-PGは細胞内酵素に対して重要な阻害作用があり、それが抗炎症・抗増殖(免疫抑制)のメカニズムとなると考えられている
MTX-PGの作用
  1. AICARトランスフェラーゼ(ATIC)を阻害することで、細胞内外のアデノシンが増加する
  2. thymidylate synthetase (TYMS)チミジル酸合成酵素を阻害してピリミジン合成が低下する
  3. transformylaseジヒドロ葉酸還元酵素を阻害し、細胞機能に必須なトランスメチル化反応を抑制する
①AICARトランスフェラーゼ(ATIC)を阻害することで、細胞内外のアデノシンが増加する
  • aminoimidazole carboxamide ribonucleotide(AICAR)の蓄積をもたらし、最終的にはアデノシンのレベルを上昇させる
  • adenosine monophosphate (AMP)deaminaseのAICAR阻害は、AMPからのアデノシンの過剰産生をもたらす
  • adenosine deaminase (ADA)によるのAICAR阻害はアデノシンからイノシンへの分解を減少させる
  • ecto-5′-nucleotidaseによるAICARの刺激により、細胞外AMPをアデノシンに変換する
アデノシンの作用
ストレス性障害刺激の後に組織保護的に働くため”a retaliatory metabolite”と呼ばれる
  • 強力な炎症抑制物質作用があり、血管拡張を誘導する
  • 細胞輸送を含む内皮細胞の炎症機能を調節する
  • 好中球と樹状細胞のcounter-regulation
  • 単球とマクロファージのサイトカイン調節
  • 単球やマクロファージのアデノシン受容体に結合することで、強力な炎症性サイトカインであるIL-12を抑制する
  • 炎症性メディエーターであるTNF, IL-6, IL-8, macrophage inflammatory protein (MIP)-1α, leukotriene (LT)B4 , and nitric oxideを抑制する
  • 抗炎症メディエーターのIL-10・IL-1receptor antagonistの産生を促進する
  • アデノシン受容体を介したプロセスでメタロプロテアーゼの組織阻害剤 (TIMP)-1を含むコラゲナーゼの合成が抑制される
つまり、アデノシンは、自己限定的でhelathyな免疫反応を促進し、好中球を介した炎症から、より効率的で特異性の高い樹状細胞を介した反応への移行を早める
そして最終的には、アデノシンはマクロファージの活性化を抑制して炎症を終了させ、Tヘルパー(Th)1細胞からTh2細胞の反応への移行を促す
アデノシンの心血管系への作用
  • 血管拡張作用
  • 陰性変力・変時作用
  • 血管平滑筋細胞の増殖抑制
  • シナプス前交感神経伝達物質の放出抑制
  • 血小板凝集抑制
RA患者は心血管疾患の発生率が高いため、MTXが心血管死亡率に有益であることが示唆されている
②thymidylate synthetase (TYMS)チミジル酸合成酵素を阻害してピリミジン合成が低下する
  • MTXはTYMSによる2′-deoxyuridylate(dUMP)の2′-deoxythymidylate(dTMP)へのメチル化を阻害する
  • その結果、DNA合成・炎症細胞増殖を抑制することが、in vitroの実験で示されている
  • DNA合成阻害については細胞周期の破壊によりCD95(APO-1/Fas)リガンド依存性 およびリガンド非依存性メカニズムを介して単核細胞のアポトーシスを引き起こす可能性がある
③MTXの抗炎症および抗増殖作用はトランスメチル化反応の阻害を介して起こっている可能性がある
  • MTXとMTX-PGはともにDHFRを阻害し,tetrahydrofolate (THF)テトラヒドロ葉酸を減少させる
  • homocysteineホモシステイン→methionineメチオニンへの変換にTHFによるメチル化必要
  • メチオニンには様々な物質のmethyl donorメチル基供与体として作用することで細胞の生存と機能に必要である
その他の機序について
  • 単核細胞によるpolyaminesポリアミンの代謝が、アンモニアや過酸化水素などの毒性物質を生成し、リンパ球の機能を低下させる可能性が示唆されている
  • B細胞にポリアミンの蓄積が、in vitroでのリウマトイド因子(RF)産生の増加を関連することが分かっており、MTXによって、免疫グロブリンとRFの両方の分泌が低下することがin vitroの実験で示唆されている
  • ②、③のようなトランスメチル化の反応は、様々な物質の合成を阻害して、細胞アポトーシスを介した抗増殖作用を有する
  • そしてポリアミン濃度を低下させることで、RF分泌と同様に毒性基質の産出を低下させて、抗炎症作用へとつながる
上記以外のMTXの作用について
  • MTXは、RA患者の末梢血単核細胞(PBMC)において、抗炎症性Th2サイトカイン(IL-4とIL-10)の遺伝子発現を増加させ、炎症性Th1サイトカイン(IL-2とIFN-γ)の遺伝子発現を減少させているという報告もある
  • Prostaglandins (PGs) や LTs はRAでの関節破壊に関わる重要なメディエーターである
  • MTXはcyclooxygenase (COX) シクロオキシゲナーゼ、 lipoxygenase (LOX)リポキシゲナーゼおよびその酵素の生成物であるPGとLTを調節する
  • Thromboxane B 2 and prostaglandin E 2 の活性も低下させる
  • 好中球によるLTB4合成を減少させる
  • 好中球の走化性を阻害する
  • matrix metalloproteinase (MMP)-1 and TIMP-1のケースで、上流のサイトカイン調節(IL-1およびIL-6)を介して遺伝子発現に間接的に作用している可能性がある